キオビベッコウ(キオビクモバチ)

昨年の今頃もカリバチの撮影をしていた。なんといっても真夏の暑い盛りが観察のチャンス。種類も多く、ハチたちの獲物も多いのだろう。

何となく浜辺に出たくなり日没近くある砂浜に向かったところ、そこにお宝が待っていた。キオビベッコウというカリバチである。もうすでにクモを埋め終わったのか、穴の入り口をふさいでいるところだった。明日はまたここに来てクモを埋める過程を撮影できるかなあ、などと考えながら、その場を通り過ぎて更に浜辺に降りていった。

日も落ちて、まさに「たそがれ時」の暗さの中、来た道を戻り始めてすぐに驚愕の光景を目にすることになった。さっきまで何もなかった砂の道に、キオビベッコウの巣穴がいくつもあいているのである。割と狭い範囲に7つもあいている。なんだこれは。。。。正しくは今ちょうど、穴を掘っているところだった。
え〜どうして?真っ暗なんだぜ。。。

予備知識のない私は、何だかわけがわからない思いで、一匹に集中して撮影を始めた。時間は19時10分。
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実はこのとき懐中電灯を持っていない。遠くに止めた車にも入っていないかも知れない。幸いストロボにモデリングランプがついているので、それを頼りに撮影している。実際は、全くの闇のなか。

獲物は1mほど離れたヨモギにかけてあった。まるまる太ったナガコガネグモだ。穴を掘りながら2度確認に行ったので、獲物を仮置きしている場所がつかめた。しかし、その様子は残念ながら撮り逃した。
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クモを運び込んだのは19時38分。連写できないのが辛い。
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しばらく穴の奥に入ったまま姿が見えない。今、産卵しているんだろうなあと想像しながら待つ。やがて再び表に出てきたハチは、穴埋め作業に移った。少しずつ砂をもどし、尾端で叩いて固めながら丁寧に穴をふさいでいく。
工事現場でダダダ・・・と砂利を固めているあの機械(ランマーというらしい)のような動きだ。ストロボで撮ると動きが見事に止まってしまい、残念ながらその動きは写せていない。
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まわりのハチの中でも最も深く穴を開けていたようで、この一匹だけ随分時間がかかった。穴を埋め終えたのは20時52分。
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さあこれで終了と思いかけたところ、ハチはそこから次の奇妙な行動に移る。すぐ後ろに別の穴を開け始めたのだ。灯りをあてられて頭がおかしくなったかと心配になった頃に、その穴を埋め始めた。たまたま近くにやってきたゴミムシダマシも不思議そうに覗き込んでいるように見えた。「なにしてんの〜」
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この奇妙な行動は、実は隣のハチにも見られた。必ずやるのか、よくやる程度なのか分からないけれど、ダミーの穴を掘っているように思えた。

さて、二つめの穴を埋めたら、今度は巣穴周辺に砂を飛ばして表面をキレイにする。お尻で穴をふさいでいた動き同様、これも写真には写せていない面白い動きだった。モーターで振動するおもちゃが机の上を滑るように動いているような感じ。。。
だめだ、うまく表現できていないです。
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全てが終了したのは9時半過ぎ。
実は、完全に終えたかどうかよくわからない。ハチが突然作業をやめて、灯りに飛んでくるようになってしまったからだ。何か、突然、産卵行動のスイッチが切れてしまったかのようだった。

帰って調べたら、キオビベッコウは夕方までに狩りをすませて暗くなるまで待機しているらしい。そして日没を待って、作業を開始するわけだ。目的は、まず間違いなく寄生バエ対策だろう。明るいうちに、クモを運ぶキオビベッコウを見たときは、確かに寄生バエが近くにいたけど、この夜の作業中、ただの一度もハエなど見なかった。

それと、キオビベッコウは何だか同種間で泥棒まがいの事をやるらしい。もう1つダミーの穴を掘っていたのは、その対策ではないだろうか。


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